統計的データ分析を行う際には、関係性の検出とその詳細な評価が重要です。その際に役立つ手法の一つが残差分析です。残差分析は、カテゴリカルデータの関連性を調べるためにカイ二乗検定と組み合わせて用いられます。本ブログでは、残差分析の概要から具体的な手順、エクセルでの実践方法、結果の解釈までを詳しく解説します。データ分析の知識を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 残差分析とは何か
残差分析は、統計的な差異の有無を調べるための手法であり、カイ二乗検定の結果に基づいて行われます。カイ二乗検定は二つのカテゴリー変数の差異を検定するための手法ですが、残差分析はその差異が具体的にどのカテゴリーに起因するのかを特定するために使用されます。
残差分析では、カイ二乗検定で統計的に有意な差が見つかった場合、各セルの「実測値と期待値の差」である残差を計算します。この残差を基に各カテゴリーの差を評価することで、差のあるカテゴリーを特定することができます。
残差分析は、通常は2×2のクロス集計表ではなく、3×2以上のクロス集計表に適用されます。カイ二乗検定の補完手法として使用されることが多く、特に異なるカテゴリー間での差異の要因を明らかにする場合に有用です。ただし、一般的な知名度はカイ二乗検定ほど高くないことがあります。
以上が、残差分析の概要です。次に、残差分析がどのような場合に使われるかについて解説します。
2. 残差分析がどのような場合に使われるか
残差分析は、カイ二乗検定の結果を評価するための手法であり、特定のセルの関連性を調べるために使用されます。以下に、残差分析が使われる場合を示します。
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カイ二乗検定の結果から、カテゴリカルな変数間の関連性を調べたい場合。
- カイ二乗検定では、変数間の全体的な関連性が判断されますが、具体的な関連性を評価するためには、残差分析を行う必要があります。
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カイ二乗検定で有意差があると判断された分割表のセルごとに、関連性の差を特定したい場合。
- 残差分析では、各セルの残差値を計算し、それを元に関連性の差を評価します。これにより、カテゴリカルデータの関連性をより詳しく調査することができます。
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カテゴリカルデータが2つしか存在しない場合は、カイ二乗検定の結果だけで関連性を判断することができます。しかし、カテゴリカルデータが3つ以上ある場合(例:3×3や3×2のクロス集計表)には、残差分析が役立ちます。
- 残差分析によって、各セルごとの関連性を評価することができます。
残差分析は、カテゴリカルデータの関連性を評価するために用いられる手法であり、特定のセルごとに関連性を詳細に調べることができます。
3. 残差分析の手順
残差分析を実施するための手順は以下の通りです。
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データの準備
– カイ二乗検定と組み合わせて使用するデータを準備します。
– クロス集計表を作成し、各カテゴリーの数値データを用意します。 -
クロス集計表の作成
– エクセルを開き、データをクロス集計表の形式に整理します。
– 「分析」→「記述統計量」→「クロス集計表」を選択します。
– 行に「地域」を、列に「種類」を指定します。 -
残差の計算
– クロス集計表のセルをクリックし、「調整済みの標準化された残差」にチェックを入れます。
– 「OK」をクリックして、残差の計算を実行します。 -
残差の解釈
– クロス集計表に表示される残差値を確認します。
– 残差が-1.96より小さいか1.96より大きい場合は、5%水準で有意と判断します。
– 残差が-2.58より小さいか2.58より大きい場合は、1%水準で有意と考えます。
– 残差がマイナスの場合は、期待値よりも低い結果と判断し、プラスの場合は、期待値よりも高い結果と判断します。 -
エクセルでの残差分析の実施
– 残差分析やカイ二乗検定を含むエクセルファイルを使用することができます。
– ダウンロードしたエクセルファイルを開き、手順に従ってデータを入力し、実行します。
以上が残差分析の手順です。エクセルを使って手軽に残差分析を実施してみてください。
4. エクセルでの残差分析の方法
エクセルを使用して残差分析を行う手順を説明します。以下のステップを順に実行してください。
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クロス集計表の作成: データの観測値を表形式で集計します。地域と種類を行と列に指定し、度数や件数をセルに表示します。また、合計値の列も作成しておきましょう。
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期待値の計算: クロス集計表の各セルにおける期待値を計算します。期待値は、各行の合計値と各列の合計値をかけて全体の合計値で割ることで求められます。エクセルの数式を使用して計算します。
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残差の計算: 各セルにおける残差を計算します。残差は観測値から期待値を引いた値です。エクセルの数式を使用して計算します。
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調整済み標準化残差の計算: 残差を調整し、標準化残差を計算します。残差を期待値で割った数値です。エクセルの数式を使用して計算します。
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P値の計算: 各列におけるP値を計算します。P値はNORM.S.DIST関数を使用して算出します。絶対値の同じ値を比較し、結果の解釈に使用します。
以上の手順に従ってエクセルで残差分析を実行することができます。結果の解釈については他のセクションで説明されていますので、そちらも参考にしてください。
5. 残差分析の結果の解釈
残差分析の結果を解釈する際には、いくつかのポイントに注意する必要があります。以下にそれらをまとめます。
残差分析の結果の解釈に注意すべきポイント
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全体的な差の確認: 残差分析はデータ全体に対する差を分析するため、全体との比較が必要です。多重比較とは異なり、個別のカテゴリー間の差を評価するわけではありません。
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残差の確認: 各セルの残差を確認しましょう。残差は観測度数から期待度数を引いた値であり、そのセルの観測度数と期待度数のずれを示します。残差が一定以上の値であれば、そのセルの観測度数は大きい(または小さい)と言えます。
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調整済み標準化残差の確認: 残差の値が単純な差のままでは使いづらい場合、調整済み標準化残差を算出して確認することもあります。調整済み標準化残差は、残差を標準偏差で割り、平均からの偏差として表した値です。
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予測される結果との比較: 残差がマイナスの場合は予測される結果よりも低いことを意味し、プラスの場合は予測される結果よりも高いことを意味します。
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結果の有意性の判断: 残差分析の結果に基づいて統計的な有意性を判断する際には、決められた閾値を用いることが一般的です。たとえば、5%水準で有意な差と判断する場合、残差の値が-1.96より小さいか1.96より大きい場合は有意とされます。
結果の解釈においては、以上のポイントを考慮しながら適切な判断を行うことが重要です。残差分析の結果を他の統計解析と併せて総合的に考慮することで、より正確な結論を導くことができます。
まとめ
残差分析は、カイ二乗検定の結果を補完する重要な手法です。クロス集計表のセル単位で詳細な差異を検出できるため、カテゴリカルデータの関連性を深く理解するのに役立ちます。結果の解釈にあたっては、データの全体的な傾向や各セルの残差の大きさ、有意性の判断などに気を付ける必要があります。この分析手法を適切に活用することで、見落としがちな重要な関連性を発見することができるでしょう。統計解析の一手法として、残差分析はデータ分析の幅を広げてくれる強力なツールといえます。