経済産業省が推進する日本企業のDX戦略:攻めのDXと守りのDXの違いとは?

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デジタルトランスフォーメーション(DX)は、現代の企業にとって競争力を維持し、さらに飛躍させるための重要な要素です。経済産業省も日本企業のDX推進を積極的に後押ししており、その中で特に注目すべきは「攻めのDX」と「守りのDX」という2つのアプローチです。この記事では、経済産業省が進める日本企業のDX推進について、攻めのDXと守りのDXの違いや取り組みのポイントを解説していきます。

目次

1. 経済産業省が進める日本企業のDX推進

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経済産業省は、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進しています。DXの推進は企業の競争力向上や成長に欠かせないものと認識されており、経済産業省は様々な取り組みを通じて企業のDXを後押ししています。

経済産業省のDX推進には、以下の具体的な取り組みがあります。

  1. DX投資促進税制の創設: 経産省は2021年度にDX投資促進税制を創設しました。この税制は、DXに必要な設備投資を行う事業者を支援するためのものです。具体的には、DXに向けた設備投資額の最大5%を法人税などから控除する措置が取られており、企業の負担を軽減しています。

  2. デジタル人材の育成と確保の支援: 経産省はデジタル人材の育成と確保を支援しています。DXの遅れの一因となっているデジタル人材の不足を解消するため、経産省は事業者が攻めのデジタル投資に踏み切れる環境づくりを目指しています。具体的な支援策としては、教育施設との連携や企業内での研修プログラムの充実などが挙げられます。

  3. 東京商工会議所の支援: 東京商工会議所(東商)もDXの推進を支援するための取り組みを行っています。東商は会員企業のデジタルシフトを多彩なメニューで支援し、中小企業とITベンダーを対象とするビジネス交流会も開催予定です。東商の支援は、企業がDXに取り組む際の情報提供やコミュニケーションの場を提供することで、積極的な取り組みを後押ししています。

経済産業省の取り組みにより、日本企業のDXへの取り組みが促進されています。日本企業がDXに積極的に取り組むことは、競争力の向上やイノベーションの創出につながると言えます。経済産業省の政策や支援を積極的に活用し、日本企業のDX推進を一層進めることが重要です。

2. 攻めのDXと守りのDXの違い

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DXの推進には、経済産業省が定義する攻めのDXと守りのDXという2つのアプローチがあります。これらのアプローチの違いを明確に理解することは、企業がDXを進める上で非常に重要です。

2-1. 攻めのDX

攻めのDXは、製品やサービス、ビジネスモデルの変革を目指す取り組みです。最新のデジタル技術を活用し、革新的なアイデアや新しいビジネスモデルを生み出すことで、企業の競争力を高めることを目指しています。

以下に具体的な例を挙げます。
– スマートフォンのアプリを活用したフードデリバリーサービス
– GPS機能を利用した新たなビジネスモデル

2-2. 守りのDX

守りのDXは、業務、組織、プロセス、企業文化・風土の変革を目指す取り組みです。デジタル技術を駆使して業務の効率化や生産性向上を図り、企業の競争力を維持・強化することを目指しています。

以下に具体的な例を挙げます。
– 契約手続きの電子化
– SNSの活用
– キャッシュレス決済の導入

両者の違いは、取り組む領域の違いにあります。攻めのDXはビジネスモデルやサービスの変革に焦点を当てており、守りのDXは業務や組織の改善に焦点を当てています。

また、守りのDXは安定性と効率性を重視し、一方で攻めのDXは革新性と競争力強化を重視します。

企業は両方の取り組みを同時に進めることが望ましいとされています。攻めのDXによって新たなビジネスモデルを創り出し、守りのDXによって業務の効率化や生産性向上を図ることで、持続的な成長と競争力の強化を実現することが可能です。

3. 世界と比べた日本企業のDX取り組みの現状

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現在の日本企業のDX取り組みは、世界と比べて遅れていると言わざるを得ません。経済産業省が推進しているものの、日本ではまだ保守的なDXが主流であり、攻めのDXへの取り組み率は低い傾向にあります。では、なぜ日本のDXが進んでいないのでしょうか。

以下に、日本企業のDX取り組みの現状に関する考察をまとめました。

1. ケースバイケースの取り組み状況

  • 日本企業の約8割は業務処理の効率化や省力化に取り組んでいます(株式会社NTTデータ経営研究所のアンケート調査)。
  • しかし、攻めのDXへの取り組み率は急激に減少しています。
  • 実際の成果が見えづらいケースも多く、攻めのDXに取り組んだ企業でも効果を実感できていない状況です。

2. デジタル人材・DX人材の不足

  • DXを実現するためにはデジタル人材やDX人材の確保が不可欠ですが、その確保が非常に難しい状況です。
  • デジタル人材の育成には時間とコストがかかり、リソースの不足により十分な教育が行えないことが課題となっています。
  • 指導者の不足も問題であり、デジタル技術に精通した人材を確保することも難しいです。

3. データ活用の難しさ

  • データ活用の方法が分からず、DXの成果を活かせていない企業も存在します。
  • デジタル人材やDX人材の確保は重要ですが、データを意味付ける能力を持つ人材も必要です。
  • また、企業の仕組みを変える必要もあります。従来の仕組みではDXの成果を活かすことが難しいのです。

4. ツール選定の難しさ

  • 適切なツールの選定は非常に重要ですが、人材の不足がツール選定の課題となっています。
  • ツール提供企業への相談も重要ですが、自社のニーズに合ったツールを選ぶためにはデジタル人材が必要です。

以上のように、日本企業のDX取り組みは世界と比べて遅れています。デジタル人材やDX人材の確保、データ活用の難しさ、ツール選定の難しさが課題となっています。これらの課題を解決し、攻めのDXへの取り組みを進めることが重要です。

4. 攻めのDXに取り組むためのポイント

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攻めのDXを成功させるためには、以下のポイントに留意する必要があります。

ポイント1: 目的の明確化

攻めのDXを進めるためには、明確な目的が必要です。どのようなビジネスモデルやデジタル技術を活用して利益を向上させたいのか、具体的な目標を設定しましょう。目的が明確であれば、組織全体が一丸となって戦略を進めることができます。

ポイント2: デジタル技術の理解と活用

攻めのDXに取り組むためには、デジタル技術の理解と活用が必要です。まずは自社の業務や課題を把握し、どのようなデジタル技術を活用すれば解決できるのかを検討しましょう。さらに、デジタル技術を活用するためのリテラシーを持った人材を育成することも重要です。

ポイント3: 変革をリードする組織文化の醸成

攻めのDXを実現するためには、変革をリードする組織文化を醸成する必要があります。上層部から社員までがDXへの取り組みを理解し、積極的に参画することが重要です。組織全体で情報の共有や意思決定を行い、迅速に行動することが攻めのDXの成功につながります。

ポイント4: プロジェクトの透明性と迅速な実施

攻めのDXのプロジェクトを透明化し、迅速な実施を図ることも重要なポイントです。プロジェクトの目標や進捗状況を共有し、関係者が情報を入手しやすい状態を作りましょう。また、小さな成果を早期に出すことでモチベーションを維持し、プロジェクトを成功させることができます。

ポイント5: 外部との連携と協力

攻めのDXに取り組むためには、外部のパートナーや専門家との連携と協力が必要です。他の企業や業界の事例やノウハウを学び、自社に適用することで効果的なDXプロジェクトを進めることができます。また、パートナーシップやコラボレーションを通じて、新たなビジネスチャンスを生み出すことも可能です。

ポイント6: 持続的な改善と学習

攻めのDXは継続的な改善と学習が重要です。プロジェクトが進行する中で得られるデータやフィードバックを活用し、改善点や課題を特定しましょう。さらに、成功事例や失敗事例から学び、次のプロジェクトに生かすことで、より効果的な攻めのDXを実現することができます。

以上のポイントを踏まえながら、攻めのDXに取り組んでいくことで、企業の競争力強化や新たなビジネスチャンスの創出につながるでしょう。攻めのDXに関する疑問や悩みがある場合は、成功事例やベストプラクティスを参考にしながら、積極的に取り組んでいきましょう。

5. 個人経営や小規模企業の取り組み方

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DXに取り組む際、個人経営の店舗や小規模企業は以下のポイントに注意しながら進めることが重要です。

5-1. 早めに「守りのDX」に取り組む

まず最初に、効率化・省力化に貢献する「守りのDX」に早めに取り組むことがおすすめです。既に多くの企業が守りのDXに取り組んでおり、ツールやサービスも登場しています。以下の取り組みが考えられます。
– 請求書作成や発送を依頼できるサービスの利用
– 電子契約システムの導入
– 売上集計ができるレジスターの導入
– キャッシュレス決済の導入

これらの取り組みにより、業務の効率化と省力化が可能となります。

5-2. 「攻めのDX」の理解を深める

攻めのDXに取り組むためには、自社のビジネスモデルとデジタル技術についての理解が必要です。他の企業の最新事例を学びながら、攻めのDXが自社にどのような効果をもたらせるかを把握しましょう。ただし、現時点では小規模企業が攻めのDXに取り組むには予算的な制約があります。まずは理解を深めつつ経営を安定させることが重要です。

5-3. 中小企業がDXに取り組む理由

なぜ中小企業がDXに取り組む必要があるのでしょうか。その理由は以下のようになります。
– 業務プロセスの改善と効率化:中小企業はリソースが限られているため、業務の効率化が必要です。DXに取り組むことで業務のデジタル化が可能になり、労働生産性の向上が期待できます。
– 人材不足問題の解決策:労働人口の減少により、中小企業は人材不足や人材確保に悩んでいます。DXの導入によって定型業務が自動化され、多様な働き方が実現できるため、人材不足問題の解決策となります。
– 市場競争力の強化:DXは業務プロセスの改革だけでなく、戦略立案力や開発力の強化も可能です。中小企業がDXを活用して新たな価値を創造し、競争力を高めることができます。
– BCP対策の体制強化:自然災害が増えている現状で、BCP対策は企業にとって重要な課題です。DXの推進によって、セキュリティの万全なクラウドを利用し、緊急時の事業継続体制を整えることができます。

5-4. 中小企業のDX事例

中小企業でもDXに取り組んでいる事例があります。以下にいくつかの事例を紹介します。

  • ウチダ製作所:金型メーカーの需要減少に直面した中で、金型共同受注サービスを開発しました。受注の受け入れや生産プロセスの最適化が実現し、業界全体の発展に貢献しています。
  • ヒサノ:重量物の運送を担当する企業で、デジタル技術を活用しました。業務のデジタル化によって効率化を図り、顧客とのコミュニケーションを密接にすることができました。
  • TATAMISER:畳の製造と販売を手がける企業で、DXによって業務プロセスの改善と効率化を図りました。注文受付から製造、納品までをデジタル化し、生産性の向上と顧客サービスの向上を実現しました。
  • okicom:飲食店の運営を行っている企業で、デジタルマーケティングを活用しました。SNSやオンライン広告を活用した集客や顧客とのコミュニケーションを強化し、売上の向上に貢献しました。

これらの中小企業の事例から、DXによって業務の改善や競争力の強化が可能であることが分かります。個人経営の店舗や小規模企業もDXに取り組むことで、成長と発展を遂げることができます。

まとめ

日本企業のDX推進には、経済産業省をはじめとする様々な取り組みがあるものの、現状では世界に比べて遅れていると言わざるを得ません。特に攻めのDXへの取り組みやデジタル人材の確保、データ活用などが課題となっています。しかし、個人経営の店舗や小規模企業も守りのDXから取り組むことで効率化や省力化を図ることが可能です。さらには攻めのDXの理解を深めつつ、自社のビジネスモデルに合ったデジタル技術を活用することで競争力の向上や新たなビジネスチャンスを生み出すことができます。中小企業がDXに取り組むことは、業務プロセスの改善や効率化、人材不足問題への対策、市場競争力の強化、BCP対策の体制強化など多くのメリットがあります。個人経営や小規模企業もDXへの取り組みを進めることで、持続的な成長と競争力の強化を実現することができるでしょう。

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この記事を書いた人

 大学卒業後、デジタルマーケティング企業に入社し、BtoBマーケティングのコンサルに従事。200社以上のコンサルティング経験に加え、ウェビナー・ワークショップ・Academyサイトの立ち上げに携わり、年間40件のイベント登壇と70件の学習コンテンツ制作を担当。
 その後、起業を志す中で、施策先行型のサービス展開ではなく企業の本質的な体質改善を促せる事業を展開できるよう、AI/DX分野において実績のあるAIソリューション企業へ転職。
 現在はAIソリューション企業に所属しながら、個人としてもAI×マーケティング分野で”未経験でもわかりやすく”をコンセプトに情報発信活動やカジュアル相談を実施中。

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