正規分布の事後分布を完全理解! ベイズ推定の基礎から応用まで

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本ブログでは、正規分布のベイズ推定について詳しく解説しています。統計学やデータ分析の分野では、正規分布が広く用いられており、ベイズ推定を適用することで、より正確な推定結果が得られます。正規分布の基本的な概念から、ベイズ推定における事前分布の選択方法、尤度関数の導出、そして事後分布の計算まで、一連の流れを丁寧に解説していきます。データの不確実性を考慮した統計的推論に興味のある方は、ぜひ読み進めてみてください。

目次

1. 正規分布とは

正規分布は、統計学やデータ分析において非常に重要な確率分布の一つです。この分布は、自然界や社会現象において多くのデータが中心付近に集まり、極端な値が少ないという特性を持っています。一般に、「鐘の形」をした曲線として描かれ、その形状から正規分布とも呼ばれています。

正規分布の定義

正規分布は、以下の二つのパラメータによって定義されます。

  • 平均(μ):分布の中心を示す値
  • 分散(σ²):データの散らばり具合を示す値

正規分布の確率密度関数(PDF)は、次のように表されます:

[
P(X = x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \exp\left(-\frac{(x – \mu)^2}{2\sigma^2}\right)
]

ここで、(X) は正規分布に従う確率変数、(x) はその具体的な値を意味します。この式には、平均と分散が重要な役割を果たします。

特徴

正規分布にはいくつかの特徴があります。

  1. 中心極限定理:多くの独立な確率変数の和が、元の分布に関わらず正規分布に近づくことが知られています。これにより、正規分布は多くの実際のデータに適用可能です。

  2. 対称性:正規分布は平均を中心に左右対称です。つまり、平均より大きい値と小さい値は同じ確率で出現します。

  3. 68-95-99.7 ルール:正規分布に従うデータの約68%は、平均から±1標準偏差(σ)以内に、95%は±2標準偏差、99.7%は±3標準偏差以内に分布します。これにより、データの分布具合を理解しやすくなります。

用途

正規分布は、ビジネス、経済学、心理学、医療など様々な分野において、データ分析や統計的推論の基盤として広く使用されています。たとえば、試験の成績や身長、体重などの自然現象は正規分布に従うことが多く、これを利用して分析を行います。

正規分布の理解は、統計学の基本であり、他の多くの分布や手法の理解にもつながります。正規分布についての知識を深めることは、データを扱う上で非常に重要です。

2. 正規分布のベイズ推定の重要性

ベイズ推定の枠組み

正規分布は、自然界や社会現象において非常に広く見られる確率分布であり、特に中央極限定理により、サンプルサイズが大きくなるほど、多くの変数が正規分布に従うことが示されています。このため、正規分布のベイズ推定は、統計的分析や機械学習において非常に重要な役割を果たします。

データの不確実性への対応

ベイズ推定は、データの不確実性を明示的に扱えるという特長があります。正規分布における事後分布は、事前分布と尤度関数を組み合わせることにより得られます。これにより、観測したデータに基づいてパラメータを更新し、より信頼性の高い推定を行うことが可能です。

個別のパラメータに対する推定

正規分布のベイズ推定を行う際、主に平均(μ)と分散(σ²)の二つのパラメータが関与します。特に、これらのパラメータは互いに依存しているため、正確に扱うことが求められます。この依存関係を理解することで、より的確な事後分布の推定が可能となるのです。

共役事前分布の使用

通常、正規分布に対する共役事前分布を選ぶことで、計算の容易さが実現します。例えば、平均に対しては他の正規分布を、分散に対してはスケールド逆カイ二乗分布を用いることで、得られる事後分布も同様の形式を保持します。この特性は、推定プロセスをシンプルにし、複雑な計算を回避する手助けとなります。

様々な応用分野

正規分布のベイズ推定は、さまざまな分野で活用されています。医学研究や経済モデル、スポーツのパフォーマンス分析など、多くの領域でデータ解析に利用されており、特にサンプルサイズが限られている場合に推定精度が向上することが期待されます。

統計的直感の獲得

ベイズ推定を用いることで、データから得られる知見は直感的に理解できるようになります。事後分布を通じて、得られた結果に対する確信度を定量的に評価することができ、意思決定における根拠を強化することができるのです。これにより、単なる数値分析ではなく、データに基づいた判断を行うことが可能となります。

3. 事前分布の選択

ベイズ推定において、事前分布の選択は非常に重要なステップです。事前分布は、データ収集前に持っている知識や信念を数式で表現するもので、これを適切に選定することが、最終的な結果に大きな影響を与えます。本節では、事前分布の選択に関する考慮点や一般的な手法について解説します。

3.1 事前分布の1つのアプローチ

事前分布の選択に際しての1つのアプローチは、過去のデータや専門家の意見を考慮することです。例えば、特定の現象に関する過去の研究結果や実験データがある場合、それらの知見をもとに事前分布を設定することで、より信頼性の高い推定が可能になります。こうした方法では、以下の段階を経て、事前分布を決定します。

  1. 過去のデータの収集: 何が知られているかを把握するために、同じ事象や関連する事象におけるデータを収集します。
  2. 専門家との対話: 知見を有する専門家と話し合い、彼らの意見を反映させることも重要です。
  3. 事前分布の形式の設定: 収集した情報をもとに、適切な確率分布の形式を選択します。

3.2 共役事前分布の利点

事前分布を選ぶ際に「共役事前分布」の概念も考慮する必要があります。共役事前分布を選択することで、事後分布が事前分布と同じ種類の分布になるため、計算が大幅に簡素化されます。この特性を利用することで、ベイズ推定の計算効率が向上し、迅速な結果が得やすくなります。

3.2.1 具体的な例

例えば、データが二項分布に従う場合、事前分布としてベータ分布を選ぶことで、得られる事後分布もベータ分布になります。このように、共役事前分布を選択することで、複雑な計算を回避し、簡易な形式で事後分布を得ることが可能になるのです。

3.3 事前分布の多様性

事前分布は、選択する母集団の特性に応じて多様な形を取ることがあります。これには、以下のような分布が含まれます。

  • 正規分布: 母平均が未知で、母分散も未知の場合、事前分布として他の正規分布を選ぶことができます。
  • ベータ分布: 二項分布のパラメータに対する事前分布を設定する際に、特に有効です。
  • gamma分布: 事象の発生率やスケールパラメータをモデリングするのに使われます。

このように、事前分布の選択は問題設定に依存し、それに適した分布を選ぶことで、より適切な推定が期待できるのです。各ケースに応じて、事前分布の特性をしっかりと理解し、選択に活かすことが必要不可欠です。

4. 尤度関数の導出

尤度関数は、観測データが与えられたときに、未知のパラメータが与えられる確率を表現する重要な概念です。特に正規分布においては、データの分布を記述するために、尤度関数を導出することが不可欠です。

正規分布の確率密度関数

まず最初に、正規分布の確率密度関数についておさらいしましょう。正規分布は以下の形式で表されます:

[
P(x|\mu, \sigma^2) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}} \exp\left(-\frac{(x – \mu)^2}{2\sigma^2}\right)
]

ここで、(\mu)は平均、(\sigma^2)は分散を示しています。この式は、データが正規分布に従っている場合の確率密度を表しています。

尤度関数の定義

(n)個の独立なデータ点 ((x_1, x_2, \ldots, x_n))が観測されたとしましょう。このとき、尤度関数(L(\mu, \sigma^2))は次のように定義されます。

[
L(\mu, \sigma^2) = \prod_{i=1}^{n} P(x_i | \mu, \sigma^2)
]

これを正確に表現するために、尤度関数は次のように記述できます。

[
L(\mu, \sigma^2) = \left(\frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}}\right)^n \exp\left{-\frac{1}{2\sigma^2} \sum_{i=1}^{n} (x_i – \mu)^2\right}
]

尤度関数の対数変換

尤度関数は通常扱いが難しいため、対数を取ることで計算を単純化します。対数尤度関数は次のように表されます。

[
\log L(\mu, \sigma^2) = n \log\left(\frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\right) – \frac{1}{2\sigma^2} \sum_{i=1}^{n} (x_i – \mu)^2
]

この式は解析的に扱いやすく、最適化の際に微分することが容易になります。

尤度の最大化

尤度関数やその対数は、パラメータ(この場合、(\mu)と(\sigma^2))を最適化して最大化することが重要です。尤度関数が最大となる位置を見つけることで、観測データに基づいた最良のパラメータ推定が可能になります。このことが、最尤推定の中心的な考え方です。

具体的には、対数尤度関数を (\mu) について微分し、その微分がゼロとなる点を探すことによって、最適な(\mu)を導出します。導出されたパラメータは、与えられたデータに対して尤度の最大値を実現することにより、最も信頼性の高い推定結果となります。

このようにして導出された尤度関数は、今後のベイズ推定における事後分布の計算においても重要な役割を果たします。正規分布の場合、その特性により、各ステップにおいて計算が非常にスムーズに進むことが期待されます。

5. 事後分布の計算

ベイズ推定において重要なプロセスの一つは、事後分布の計算です。このプロセスでは、観測データに基づいて未知のパラメータについての信念を再評価します。以下に、事後分布の計算方法について詳述します。

5.1 事後分布の基本概念

事後分布は、ベイズの定理を用いて表現されます。

[
p(\theta|x) = \frac{p(x|\theta) p(\theta)}{p(x)}
]

ここで、
– ( p(\theta|x) ) は事後分布
– ( p(x|\theta) ) は尤度
– ( p(\theta) ) は事前分布
– ( p(x) ) は周辺尤度としての正規化定数です。

この式を通じて、事前分布 ( p(\theta) ) はパラメータに関する最初の信念を、尤度 ( p(x|\theta) ) は観測データ ( x ) に基づくパラメータ ( \theta ) の信頼性を示します。事後分布は、これらの情報を統合することでデータ取得後の新たな見解を導出します。

5.2 正規分布における事後分布の計算

正規分布に関連する場合、事後分布の計算は比較的明快です。事後分布を求めるための尤度と事前分布がともに正規分布の場合を考えます。

5.2.1 尤度関数の設定

観測データ ( x_1, x_2, \ldots, x_N ) が正規分布に従うと仮定し、尤度関数は次のように表現されます。

[
p(x|\mu) = \mathcal{N}(x;\mu,\sigma^2)
]

ここで、( \mu ) は正規分布の平均、( \sigma^2 ) は分散です。また、事前分布も正規分布として次のように定義します。

[
p(\mu) = \mathcal{N}(\mu;\mu_0,\tau^2)
]

これにより、対数を用いた事後分布の計算が可能となります。

5.2.2 対数事後分布の導出

対数事後分布は次の形式で表せます:

[
\ln p(\mu|x) \propto \sum_{n=1}^{N} \ln p(x_n|\mu) + \ln p(\mu)
]

この式により、尤度と事前分布の対数を計算し、それらを加算することで事後分布の性質を探究できます。最大化手法を用いてこの対数事後分布を最大化することで、事後の解析が進みます。

5.3 事後分布の構造

共役事前分布を選んだ場合、事後分布は同様の構造を持ちます。この特性により計算が大幅に簡便化されます。具体的には、事前分布と尤度が共に正規分布である場合、事後分布も正規分布になります。この特徴は、ベイズ推定の更新を効率化する要素となります。

5.4 事後分布の計算結果

事後分布の具体的な平均と分散は、次のように導出されます。

  • 事後平均

[
E(\mu|x) = \frac{\tau^2 \sum_{n=1}^{N} x_n + \sigma^2 \mu_0}{\tau^2 N + \sigma^2}
]

  • 事後分散

[
Var(\mu|x) = \frac{1}{\frac{N}{\sigma^2} + \frac{1}{\tau^2}}
]

これらの式を使用することで、事後分布の平均と分散を効率よく求めることが可能です。事後分布の算出によって、将来のデータ予測や信頼区間の計算に応じることができ、ベイズ推定の実践的な効果を高めることができます。

まとめ

正規分布は統計学や機械学習の基礎となる重要な概念です。正規分布のベイズ推定は、データの不確実性を明示的に扱えるため、サンプルサイズが小さい場合でも高精度な推定が可能になります。事前分布の選択や尤度関数の導出、事後分布の計算といった一連のプロセスを理解することで、ベイズ推定の活用範囲が広がり、より信頼性の高い分析結果が得られるはずです。正規分布のベイズ推定は、さまざまな分野で重宝されており、統計的直感を養う上でも有効です。本記事で紹介した知識を活かし、データ分析の精度向上に役立ててください。

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この記事を書いた人

 大学卒業後、デジタルマーケティング企業に入社し、BtoBマーケティングのコンサルに従事。200社以上のコンサルティング経験に加え、ウェビナー・ワークショップ・Academyサイトの立ち上げに携わり、年間40件のイベント登壇と70件の学習コンテンツ制作を担当。
 その後、起業を志す中で、施策先行型のサービス展開ではなく企業の本質的な体質改善を促せる事業を展開できるよう、AI/DX分野において実績のあるAIソリューション企業へ転職。
 現在はAIソリューション企業に所属しながら、個人としてもAI×マーケティング分野で”未経験でもわかりやすく”をコンセプトに情報発信活動やカジュアル相談を実施中。

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