『tsuzumi』が変える日本のAI活用 – NTTの国産LLM『tsuzumi』の凄さと可能性

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AI(人工知能)の急速な進化により、企業や組織にとって国産AIを活用することが重要な課題となっています。本ブログでは、NTTが開発した国産AI「tsuzumi」の特徴、ソリューション、導入事例などについて詳しく解説します。「tsuzumi」は日本語対応や軽量化、柔軟性の高さなどの特長を持ち、さまざまな業界での活用が期待されている注目の国産AIです。ぜひご一読ください。

目次

1. はじめに – NTTの国産AI「tsuzumi」とは何か?

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NTTは、2024年3月に導入された自社開発の大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」による国産AIの商用サービス提供を開始しました。tsuzumiは、チャット型生成AIや自然言語処理に利用されるLLMであり、2024年4月には商用利用が開始される予定です。

tsuzumiは、日本語と英語に対応し、図表読み込みもできる優れた機能を持っています。このAIは、NTTが以前にリリースした「NTT版BERT」を元にしており、現在では産総研、東京大学松尾研究室、ソフトバンクなどの研究機関や企業によっても開発が続けられています。

「tsuzumi」は、OpenAIの「GPT」やメタ(旧フェイスブック)の「Llama」、グーグルの「PaLM」といったアメリカの競合AIと比較されますが、日本語に特化し、国家安全保障の観点も考慮された「国産LLM」として期待されています。

以下に、「tsuzumi」の特徴をいくつかご紹介します:
– パラメーター数を軽量化したため、1つのGPUで動作し、大規模なハードウェアを必要としません。
– 日本語において世界トップレベルの処理能力を持ち、高いパフォーマンスを発揮します。
– マルチモーダルにも対応し、図表の読解や聴覚の処理も可能です。
– 各企業に合わせてカスタマイズが可能であり、低コストで業界や企業に特化したLLMを構築できます。
– クローズドな環境で運用できるため、機密性の高い情報を学習させ、LLMをカスタマイズできます。

「tsuzumi」は、導入する企業が自身のニーズに合わせてカスタマイズし、最適に利用することが前提です。そのため、製造業や自治体、金融機関などの機密性が重要な業界から多くの引き合いがあります。具体的な活用例としては、コールセンターの活用や議事録の自動生成、要約、業務マニュアルからのQ&A自動生成などが挙げられています。

NTTは、「tsuzumi」の商用サービス提供に加えて、導入からカスタマイズ、運用まで一貫してサポートするソリューションサービスも提供しています。また、日本国内だけでなく、グローバル展開も計画しています。

「tsuzumi」は、小型かつ軽量ながら高い言語処理能力やカスタマイズ性、クローズドな環境での運用可能性など、多くの特徴を持つ国産AIです。今後さらなる進化が期待され、AIの生成能力を活用したさまざまな分野への応用も期待されています。

2. 「tsuzumi」の特徴

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「tsuzumi」はNTTが開発した国産AIで、以下の特徴を持っています。

2.1 日本語と英語に対応

  • 「tsuzumi」は日本語と英語のどちらにも対応しています。特に日本語の回答性能は世界トップクラスです。

2.2 軽量でコストパフォーマンスが高い

  • パラメータサイズが小さく、学習コストや推論コストを抑えることができます。
  • 「tsuzumi-0.6B」はCPUだけでも実行可能であり、GPUが必要ありません。そのため、手軽に実行することができます。
  • GPUのコストはGPT-3と比較して、学習時には約25分の1、利用時には約20分の1です。

2.3 業界や企業内リソース、用途に特化させられる高い柔軟性

  • 「tsuzumi」は業界や企業内のリソース、用途に特化させることができます。
  • 追加学習により少ないチューニングで実現可能であり、特定の業界に特有の言語表現や知識に対応することができます。

2.4 文章だけではなく図表や請求書などのドキュメントの読解に対応

  • 「tsuzumi」はテキストに留まらず、図表や請求書などのドキュメントの読解にも対応しています。
  • PowerPointのファイルなども解析することができます。

以上が「tsuzumi」の特徴です。これらの特長により、「tsuzumi」は多くの企業や業界での利用が期待されています。

3. 「tsuzumi」の3つのソリューション

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NTTは、「tsuzumi」を使った3つのソリューションを提供しています。これらのソリューションは、顧客体験(CX)の改善、社内業務(EX)の改善、IT運用の自動化を目指して設計されています。

3.1 CXソリューション

CXソリューションでは、コンタクトセンターのオペレーター支援やバックヤードの業務活用を効率化するためのソリューションが提供されています。デジタルヒューマンとtsuzumiを組み合わせることで、店舗やウェブ上での顧客との自然なコミュニケーションが実現できます。例えば、富士薬品では、顧客データに基づいた店舗対応を実現するために、デジタルヒューマンとtsuzumiを活用しています。

3.2 EXソリューション

EXソリューションは、各業界や業務に特化した従業員支援を提供します。製造業、金融、流通、サービス、自治体など、さまざまな業界の業務プロセスに合わせて、プロンプトと業界特化LLM(Large Language Models)を組み合わせることで、業務の効率化や生産性の向上を実現します。福井県では、EXソリューションを活用したPoC(概念実証)が行われ、職員の業務負担の軽減や県民サービスの向上を目指しています。

3.3 IT運用サポートソリューション

IT運用サポートソリューションは、IT運用の自動化やLLM活用による簡易化を提供します。セキュリティ対応などの作業を自動化する一方で、tsuzumiによるAIのアドバイスを受けながら、人手が必要な操作サポートやセキュリティレポートの生成、脆弱性診断などを行うことができます。企業のIT人材の負担軽減を目的としたソリューションとして提供されています。

これらの3つのソリューションを活用することで、企業は効果的にAIを活用することができます。NTTはこれらのソリューションの提供に加えて、2024年5月からパートナープログラムを開始予定です。パートナープログラムでは、ソリューションパートナー、モデルパートナー、インテグレーションパートナーの3つのカテゴリに分けて、パートナーの育成や情報交換を支援します。

4. 導入事例

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日本国内外で様々な企業や団体が、NTTの国産AI「tsuzumi」の導入を進めている。以下に、一部の導入事例を紹介する。

4.1 京都大学医学部附属病院と新医療リアルワールドデータ研究機構(PRiME-R)とのテスト事例

  • カルテの構造データ化の実現: tsuzumiの技術を活用し、患者のカルテデータを構造化し、情報の抽出や解析を容易にすることで、医療の効率化を図る取り組みが行われた。

4.2 東京海洋日動とのテスト事例

  • コンタクトセンターでのコールワークの負担削減: tsuzumiを活用し、コンタクトセンターのオペレーター業務を支援。顧客の問い合わせ内容を自動的に解析し、回答に必要な情報を提供することで、オペレーターの負担を軽減し、効率的な顧客対応を実現した。

4.3 富士薬品とのテスト事例

  • デジタルヒューマンとtsuzumiによる店舗対応の改善: 富士薬品の自社イベントにて、デジタルヒューマンとtsuzumiを活用し、顧客データに基づいた店舗対応を行なった。自然なコミュニケーションを実現し、顧客満足度の向上を図った。

これらの事例は、tsuzumiの機能を活用することで、様々な業界や用途において効率化や改善が実現されている。また、tsuzumiのカスタマイズ性やマルチモーダル性などの特徴も活かされており、企業のニーズに合わせた柔軟な導入が可能となっている。今後もさらなる導入事例の拡大が期待される。

5. 「tsuzumi」の今後の展望

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「tsuzumi」はさらなる発展が期待されています。以下に、その今後の展望を詳しく説明します。

5.1 グローバル展開の拡大

「tsuzumi」は、商用サービス開始とともに、グローバル展開を行います。海外からも引き合いがあり、グローバルな需要に応えるためにも展開を拡大する必要があります。

5.2 モーダル拡張の実現

現在の「tsuzumi」は言語と視覚に対応していますが、今後はさらなるモーダル拡張が実現されます。音声のニュアンスや顔の表情、ユーザの状況などの情報を組み合わせた理解や、ロボットとの協調作業など、さまざまな場面での活用が可能になります。

5.3 モデルの改善と拡充

「tsuzumi」は研究開発を進め、モデルの改善と拡充を行います。特に、サイバーセキュリティ分野での応用やAIコンステレーションとの連携など、新たな研究開発領域に積極的に取り組みます。

5.4 パートナープログラムの展開

2024年5月から、「tsuzumi」のパートナープログラムが開始されます。ソリューションパートナー、モデルパートナー、インテグレーションパートナーの3つのパートナーシップを展開し、企業や業界ごとのニーズに合わせたサービスを提供していきます。

「tsuzumi」は技術の発展とパートナーシップの活動により、多くの企業や団体が活用し、ビジネスの効率化や改善を図ることが期待されます。

まとめ

「tsuzumi」は、NTTが開発した国産のAI言語モデルで、日本語と英語に対応し、さまざまな分野での活用が期待されています。パラメーター数を軽量化したことで、リソースの少ない環境でも実行できるほか、マルチモーダルに対応し、図表の読解や聴覚処理も可能です。また、企業や業界に合わせてカスタマイズできるため、幅広い分野での導入が進んでおり、CX向上、EX改善、IT運用の自動化といったさまざまなソリューションを提供しています。今後は、グローバル展開の拡大や機能の拡充、パートナープログラムの展開など、さらなる発展が期待されます。「tsuzumi」は、日本発の高性能で柔軟なAIとして、企業の課題解決や生産性向上に大きく貢献していくことでしょう。

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この記事を書いた人

 大学卒業後、デジタルマーケティング企業に入社し、BtoBマーケティングのコンサルに従事。200社以上のコンサルティング経験に加え、ウェビナー・ワークショップ・Academyサイトの立ち上げに携わり、年間40件のイベント登壇と70件の学習コンテンツ制作を担当。
 その後、起業を志す中で、施策先行型のサービス展開ではなく企業の本質的な体質改善を促せる事業を展開できるよう、AI/DX分野において実績のあるAIソリューション企業へ転職。
 現在はAIソリューション企業に所属しながら、個人としてもAI×マーケティング分野で”未経験でもわかりやすく”をコンセプトに情報発信活動やカジュアル相談を実施中。

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